譲渡所得の取得費がわからない方の確定申告
毎年の確定申告のご依頼の中で、お困りの方が多いのが『売却した不動産の購入当時の金額が記載してある売買契約書が見当たらない・・・』『両親から相続した後に不動産や株式を売却したが、購入した金額がわからない・・・』という方。
ご自身で、国税庁HPや税務署に問合せして調べたところ、取得費が分からないときは「売却額の5%を取得費(専門用語で「概算取得費」といいます)として計算する」とされているみたいだけど・・・と思っている方も多くいると思います。
確かに国税庁のHPには、下記の通り取得費がわからないときには、5%相当額を取得費とすることが『できます』と明示されています。
この『できます』とは「任意」であり、不動産を購入した当時の金額がわからない場合や、実際の金額が記載された売買契約書などの証票類を紛失してしまった場合には、概算取得費(譲渡価額✕5%)ではない方法で計算した確定申告も認められているのです。
(ただし、どんなケースでも認められる訳でなく、合理的・客観的な計算根拠の提出が必要となります。)
このような取得費がわからない方のために、当事務所では「購入当時の状況を考えると明らかに売却額の5%以上で購入したという方」については、実情になるべく近い適正な金額での申告ができるように、今まで申告実績がある下記の計算方法を比較検討して、条件を満たす場合には、ご同意を頂いた上で、税務当局に否認されることのないように、別途計算書類や根拠資料を添付して確定申告書を提出させて頂いております。
- 売却した不動産の購入当時の金額が記載してある売買契約書が見当たらない方
- 親から相続した後に売却した不動産や株式の購入した金額がわからない方
- 認知症である親の介護資金を確保するために、親が所有する不動産を売却したが、購入した金額がわからない方 など
ご依頼の規定料金+特別加算料金
(取得費不明計算報酬:節税額✕15~20%)
- 各種指数に関するデータの取得費用を含んだ料金となります。
- 不動産の取得年月日や所在地、ご依頼時期、節税額などにより変動いたします。
(事前にお見積りを提示させて頂いております) - 万が一、税務当局に特別計算が認められなかった場合には、特別加算料金の全額を返金させて頂きます。
5%計算以外の7つの計算方法
売却した不動産の購入当時の金額がわからない場合には、どうしたらよいのでしょうか?
概算取得費(譲渡価額✕5%)による計算は、売却価格さえわかれば簡単に計算できるのですが、明らかに5%以上で購入しているときには「税金を過払いする」こととなってしまいます。
当事務所では、実情になるべく近い有利な金額での申告ができるように、下記の計算方法を検討し、条件を満たす場合には、ご同意の上で確定申告書を提出させて頂きます。
初めに申しておきますが、以下の計算方法を税務署で指南を受けることは、まず期待できません。
下記の方法による確定申告は、根拠資料の入手や計算書類の作成には、専門家である税理士でも、かなりの日数を要します。
このようなケースでお困りの方は、確定申告の期限が迫る前に、一日でも早く専門家である税理士へご依頼やご相談されることをオススメ致します。
売買契約書はなくても、購入当時のチラシやパンフレットなどが残っているケースがあります。
特に、新築マンションの場合には、管理組合に分譲当時の価格が記載されているパンフレットが保存されていることが多くありますので、一度確認してみると良いでしょう。
もし、無事に入手できれば、これらの資料により計算することができるケースがあります。
売買契約書は紛失していても、権利証とともにローンの金銭消費貸借契約書・返済予定表が残っているケースもあります。
ローンは、原則として購入価格以上の融資はできないため、頭金0円でフルローンのケースでは、これらの書類により購入価格を計算できるケースがあります。
(その他、住宅ローンの入金や支払いがある通帳などにより、計算できるケースもあります)
ただし、頭金を支払っているケースでは、正確な計算は難しいという欠点があります。
日本国内の不動産を売買した場合には、ほぼ必ず法務局に登記をする制度になっています。
不動産をローンにより購入している場合には、抵当権が設定されることになっており、法務局で入手することができる「登記事項証明書」の乙欄には、借入金額・利率などの情報が記載してあります。
これらの情報により、購入価格を推察して計算できるケースがあります。
不動産全体の価格がわかるものはなくても、手付金などの領収書・親族からの借入の念書・購入当時の計画メモなどが残っているケースもあります。
これらのいわゆる素面資料により、購入価格を推察して計算できるケースもあります。
このような一部の情報により購入価格を推察して計算する場合には、独自の計算書類の他に、申告する本人の「確約書」などを別途作成して自署押印の上で、確定申告書に添付して提出する必要があります。
土地については、一般財団法人日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」の購入時と現在との指数の変動率を計算して、売却価格をこの割合で割戻すことにより、購入当時の取得費相当額を計算します。
建物については「着工建築物構造別単価」を基にして計算された、税務署が公表している「建物の標準的な建築価格表」に記載してある建築単価などを参考にして、建物の床面積から「取得費」を算定して、購入時から売却時までの「減価償却費相当額」を控除した金額により取得費を計算します。
ただし、この方法で算出された取得費はすべてのケースで認められているものではなく、算出するためには下記のような一定の条件を満たす必要があります。
市街地価格指数を利用できる条件
- 購入当時の価格や購入履歴を証明できる資料がないこと
- 土地の所在する地域が主要都市であること
- 土地の地目が、取得時から現在まで「宅地」であること(田・畑・山林・原野・雑種地などは計算できない)
- 市街地価格指数の査定の対象となっている地域と評価対象地の地域とが類似していること
- 土地が所在する地域の路線価や公示地価などの地価が、指数と同じ水準で推移していること
計算例
- 購入当時の価格や購入履歴を証明できる資料がないこと
- 土地の所在する地域が主要都市であること
- 土地の地目が、取得時から現在まで「宅地」であること(田・畑・山林・原野・雑種地などは計算できない)
- 市街地価格指数の査定の対象となっている地域と評価対象地の地域とが類似していること
- 土地が所在する地域の路線価や公示地価などの地価が、指数と同じ水準で推移していること
①譲渡所得(市街地価格指数による)
当時の購入価格は「2,500万円(4,000万円÷80✕50)」となり、譲渡費用が0円ならば、売却益である譲渡所得の金額は「1,500万円(4,000万円-2,500万円)」となります。
②譲渡所得(5%概算取得費による)
購入価格は「200万円(4,000万円✕5%)」となり、譲渡費用が0円ならば、売却益である譲渡所得の金額は「3,800万円(4,000万円-200万円)」となります。
計算方法による差額の税金
計算方法による譲渡所得の金額の差額は「2,300万円(②3,800万円-①1,500万円)」ということになります。
税率は、上記に記載の通り、おおよそ20%(所得税15%+住民税5%)なので、このケースでの税金は『460万円(2,300万円✕20%)』も変わることになります。
路線価や公示価格の変動指数を利用して、購入価格を推察する方法となります。
土地については、簡単にいうと、「路線価や公示価格」の購入時と現在との変動率を計算して、売却価格をこの割合で割戻すことにより、購入当時の取得費相当額を計算することになります。
建物については、「着工建築物構造別単価」を基にして計算された、税務署が公表している「建物の標準的な建築価格表」に記載してある建築単価などを参考にして、建物の床面積から「取得費」を算定して、購入時から売却時までの「減価償却費相当額」を控除した金額により取得費を計算します。
ただし、この方法で算出された取得費も、すべてのケースで認められるものではなく、算出するためには下記のような条件を満たす必要があります。
路線価指数を利用できるケース
- 購入当時の価格や購入履歴を証明できる資料がないこと
- 路線価の制度開始の昭和30年以降に購入したものであること
- 購入から現在まで路線価が設定されている土地であること
平成以降に購入した不動産のケースでは、不動産鑑定士に過去の取得費を算出してもらう方法がありますが、その場合には別途費用と時間が必要となります。